GoTheDistance!ジェニファーの法政大学通信ブログ

法政大学通信ブログ by ジェニファー。法政大学通信教育課程・経済学部商業学科に2015後期入学(3年次編入)。試験やリポート、学習の内容と進捗状況、日々の気付きなど。Go the Distance!最後までやり遂げよう!

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『家』重視の傾向は西高東低―消費実態と社会生活に見る東西比較

※これは統計学Ⅱのリポート課題として作成したものです。

 

関東と近畿の相違点について、消費実態と社会生活の観点から比較し、その傾向と要因について分析した。

対象地域については、東京と大阪のみで比較した場合、その差異が何に起因するのか、分析が困難なため、総務省統計局データにおいて『関東』、『近畿』と定義されている以下の地域を対象とした。

 

『関東』: 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県

『近畿』: 京都府、大阪府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県

 

データは主に、統計局の全国消費実態調査、および社会生活基本調査を使用し、二人以上の世帯のうち、勤労世帯を対象とした。

さらに、社会生活については、ライフステージや性別によって大きな差が出ると考えられるため、子育て中の有業者世帯の男女を対象とし、行動の種類別に行動者平均時間を比較した。

 

消費行動

衣食住に関する品目について、世帯当たり1か月間の支出を関東と近畿で比較した。

比較分析にあたっては、関東・近畿・全国平均における各品目の消費額が世帯の消費支出全体の何%に当たるかを割り出した上で、品目ごとに全国平均を基準(100%)として、関東・近畿の数字を比較した。

まず、大きな括りとして、衣食住を見ると、関東・近畿とも衣食住すべてにおいて全国平均をやや上回るが、特に目立つのは、関東の衣(被服・履物)の支出の多さであった<図1>。

 

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さらに、品目の種別を問わず、東西の差が大きい順に10品目を抽出した<図2>。

 

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このうち、関東の方が消費支出の大きい項目は、携帯型音楽・映像用機器、装身具、カメラである。

一方、近畿の方が消費支出の大きい品目は、祭具・墓石、書斎・学習用机・いす、楽器、腕時計、生鮮肉、パソコン、テレビである。

これらの結果から見られる傾向として、関東は個人が身につけたり携帯したりする品目であるのに対し、近畿は据え置き型の耐久消費財や、家庭での調理が必要な食材、また、祭具・墓石等、広い意味で『家』に関係する品目が多い。

 

社会生活

次に、社会生活(日々、どのような活動をして過ごし、それぞれの活動にどれくらい時間を使っているか)について、関東・近畿を比較した。

比較分析にあたっては、項目ごとに全国平均を基準(100%)として、関東・近畿の数字を比較した。東西の差が大きい順に10項目を抽出したのが<図3>である。

 

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このうち、特に関東・近畿それぞれにおいて行動時間の長さが目立つ項目(全国平均を100%として110%以上)の項目は、関東では『学業』、近畿では『介護・看護』および『ボランティア・社会参加活動』である。

関東が個人での活動であるのに対して、近畿は、家族や地域・社会との関係をともなうものである。

 

要因の分析と検証

消費実態と社会生活の観点から関東と近畿の間に見られた違いから、『家』に着目し、その要因について①~③の仮説を立て、それぞれについて分析し検証した。

 

①家具と住宅事情、仏壇と家制度の相関

【仮説】

家に関連する品目のうち、特に東西で消費額の差が大きい、『書斎・学習机・いす』(据え置き型の耐久消費財)と『祭具・墓石』は、それぞれ差を生じる要因が異なるのではないか。

前者は住宅の広さと、後者は『家制度』と相関する。

すなわち、近畿地方には旧家が多く、そのような家には立派な仏壇や墓があり、維持費(当該品目の消費額には、線香・ろうそく等も含まれている)もかかっているのではないか。


【分析と検証】

据え置き型の耐久消費財と、現住居の延べ床面積の相関を見た。

『書斎・学習用机・いす』の千世帯当たりの所有台数と、床面積の相関は、全体でr=0.67、関東・近畿ではそれぞれ、r=0.75、r=0.71と強い相関を示した<図4>。

 

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また、『楽器』をピアノと仮定し、千世帯当たりの所有台数と、床面積の相関は、全体でr=0.76、関東r=0.78、近畿r=0.76といずれも強い相関を示した<図5>。

 

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このことから、据え置き型耐久消費財の所有率および消費額は、東西の違いと言うよりは、住宅事情(床面積)に相関するものと考えられる。

 

一方、祭具・墓石の消費額と旧家(=現住居の居住年数50年以上)の相関は、全体r=0.28、関東r=0.08、近畿r=0.67と、近畿で弱い相関が見られた<図6>。

 

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この結果から、近畿の旧家には立派な仏壇やお墓がある可能性が高いが、関東では特にそういった傾向は見られない。

 

②居住年数と社会参加状況の相関

【仮説】

地域に根を下ろしている(=居住年数が長い)ほど、ボランティア・社会参加活動をすることが多くなる。


【分析と検証】

ボランティア・社会参加活動時間と、現住居の居住年数10年以上の相関は、全体r=-0.32、関東r=0.02、近畿r=-0.81と、近畿で強い逆相関が見られ、仮説とはまったく異なる結果となった<図7>。

 

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それでは、他にボランティア・社会活動参加を促す要因は何だろうか?

子どもがいる世帯では地域活動にかかわる機会が増えると仮定し、ボランティア・社会参加活動時間と世帯当たり子ども数(18歳未満の人員)の相関を見たところ、全体でr=0.10、関東r=-0.30、近畿r=0.59と、近畿で弱い相関を示した<図8>。

 

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また、ボランティア・社会参加活動時間と、介護・看護時間の相関を見たところ、全体でr=-0.38、関東r=0.09、近畿r=-0.69と、近畿で弱い逆相関を示した<図9>。

 

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上記の分析からわかることは、近畿では子どもがいることがボランティア・社会活動参加の要因となる傾向があるが、居住年数が長い世帯では、逆にその活動時間が少ない。

居住年数が長いほど、世帯に高齢者がいる確率が高いであろうから、そのことが影響している可能性があり、次の仮説③につながる。

一方、関東では、居住年数の長さも、子どもがいることも、ボランティア・社会活動参加の要因となっているとは言えない。

 

③家庭での介護時間と介護施設充足状況の相関

【仮説】

近畿で介護・看護をする時間が長いのは、関東に比べ、介護施設が不足しているせいではないか?

また、それらを家庭において女性が一手に担っているため、行動者平均時間の数字が大きくなっていることも考えられる。


【分析と検証】

介護・看護の時間の長さと、人口千人当たりの介護施設定員数の相関は、全体でr=0.12、関東r=-0.15、近畿r=0.01であり、いずれも相関は見られなかった<図10>。

 

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施設によって入所条件や状況が異なるため、一概には言えないが、施設が足りないから家庭での負担が増している、という単純な構図ではなさそうである。

なお、介護・看護の時間の長さと、世帯当たりの高齢者人員数の相関を見ると、全体でr=0.54、関東r=0.48、近畿r=0.88と、近畿で強い相関を示した<図11>。

 

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次に、介護・看護を女性が一手に担っているのか、関東・近畿で行動時間の差が大きかった他の項目とともに、男女に見られる違いを関東・近畿で比較した<図12、13>。

 

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関東・近畿とも、家事や育児において女性の行動時間が男性を大きく上回る等、男女の役割分担がはっきりしているのがわかる。

ただし、介護・看護については、近畿では男女とも全国平均に比べて行動時間がかなり多くなっている。

このことから、近畿では、高齢の親と同居している世帯が多いとみられ、要介護となった場合には、介護施設の有無とは関係なく、自宅で介護をしているケースが多く、男女ともその担い手となっている様子がうかがえる。

 

まとめ

以上の分析結果より、関東に比べると、近畿では『家』とのかかわりが強く、人手を家庭内で賄う傾向が見られる。

これらは外的要因との相関では説明できず、文化や意識に起因する特徴である可能性が高いと考えられる。

 

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