英文タイプと女子の経済合理性
簿記会計の学習において、電卓を叩くのが遅いのは、大きなハンデだ。
私はテンキーが苦手で、それはなぜかというと、世代的に、最初にキーボード操作に馴染んだのが『英文タイプ』だったため、文字キー上部に横一列に並んだ数字を打つことに慣れており、パソコンを使うようになってからも、右側のテンキーにはあまり触れることがなかった。
私が社会に出たのは、今から四半世紀以上も前のことで、当時、女子が就職の際に取っておくとよい実務系の資格として、『日本商工会議所主催・英文タイプライティング検定』は上位に入っていた。
実際、貿易実務の他、英文書類を扱うところでは、よく使われていた。タイプに加えて、『テレックス』を豪速で叩けることも必須スキルであったから、英文タイプの訓練に励むことは、経済合理性にかなっていたのだ。
今思えば、あんなことよくできてたなと思う。複雑な表が満載の機械の仕様書なんかも英文タイプでパチパチ打って、それを版下にする。文字ピッチは基本的に2段階しかなく、1行の文字数は固定なので、表見出しの文字数を一つずつ数えて、左右マージンも計算して打っていく。大きい表の場合、複数枚をつなぎあわせる。最終的に一つの表としてつじつまが合うように、各ページを作成していく。
当時、そんな地味な仕事をする私の頭の中には、こんな思いがあった。
「手に職あれば、結婚してからも仕事がつづけられる」
かつての自分が健気に思える。
『手に職』というスタンスは真っ当だったと思う。ただ、その内容は時代の流れとともにどんどん変わっていく。『結婚』がデフォルト設定になっていたのは、自分のことがよくわかっていなかったと言う他ないのだけど、そういう時代だったのだろうし、若かった自分を責めるのは、あまりに酷だ。
そんなわけで、これから先、自分も高齢者になりつつ、高齢化社会を生き抜くために、地味に勉強をつづけようと思う。
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