GoTheDistance!ジェニファーの法政大学通信ブログ

法政大学通信ブログ by ジェニファー。法政大学通信教育課程・経済学部商業学科に2015後期入学(3年次編入)。試験やリポート、学習の内容と進捗状況、日々の気付きなど。Go the Distance!最後までやり遂げよう!

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統計学と選挙速報とセレンディピティ

この国の調査の過半数はゴミである。

ーーという帯の言葉にドキッとした。ちょうど統計学をやっているところなので、興味深く、一気読みした。『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』。

著者曰く、

データや社会調査の情報はだいたい三つに分類される。役に立つ有益なものと、目下のところは役に立たないが将来的に必要となりそうなもの、そして「ゴミ」の三つである。数量的にはこの最後の「ゴミ」が圧倒的に多いが、この「ゴミ」をすぐに捨てることができる人は、そうでない人より、かなり有利なポジションを占めることになるだろう。この能力がリサーチ・リテラシーのある人とない人の差となる。

過激なようでいて、情報社会を生きていくための指南書といった感じ。そして、実際にあった社会調査について、具体的にどこがヘンなのか、わかりやすく教えてくれる。(著者の専門は、犯罪学、ギャンブル社会学、社会調査論)

個人的に、もっとも勉強になったのは、選挙速報に関するくだり。かつて、参院補欠選挙で、たった一人しかいない当選者を某民放テレビ局が大幅に外した件について、著者はこう推測・考察している。

それまでNHKの独壇場の感のあった当確を出すタイミングに民法が割って入ったのは、1980年代後半頃だったろうか。とはいえ当時は、基礎票の集計や出口調査の精度を上げたのではなく、とにかくNHKより早く当確を出そうと、(たぶん)「当選確実」の定義を変えただけだったのではないだろうか。NHKはそれまで、統計学的に99パーセント当選が確実になった時点で「当確」を出していたが、民法はその99パーセントの確実性(有意性と呼ぶ)を95パーセント程度まで下げたものと思われる。

なるほど。選挙速報って、そんなふうにして出してたのか。そして、統計学の初歩を勉強している私は、上記の有意性については、練習問題の『小人の身長について、母集団の平均の95%と99%信頼区間を求める』段階なのだけど、実社会でどう利用されるのか、これでイメージできた。当確が出て、万歳三唱してしまった候補者を思うと、胸が痛む。

現代社会におけるリサーチ・リテラシーの重要性について、

情報機器やシステムの進んだ現代では、他人より、より多くの情報を集めることを競っても意味がない。情報など、集めようと思えばいくらでも集められるからである。むしろ今後、必要となるのは、あふれるデータの中から真に必要なものをかぎ分ける能力、いわゆる「セレンディピティ(serendipity)」と呼ばれる能力であろう。

この指摘、しっかり頭と心に留めておこうと思う。

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