宝くじとホームレスの鈴木さんについて
「会社辞めてやる!」
先日の新聞に、宝くじの高額当選者のお金の使い道についての調査が出ていた。
1000万円以上の高額当せん者を対象に、当せん金の受け取り手続きをした際にアンケートし、934人が回答した。当せん金の使い道(複数回答)は、「貯蓄」が44.8%で最も多かった。ほかに「旅行」15.7%、「趣味の充実」5.9%などで、「退職する」としたのは0.4%の4人にとどまった。
<日本経済新聞2016年06月14日夕刊『宝くじ当せん金、44%が「貯蓄」、昨年度の長者白書』より>
よく冗談まじりに「宝くじ当たったら、会社辞めてやる」とか言うのを聞くけど、いざ当たったら、本当に辞める人はごく少数のようだ。
もっとも、調査対象には、当選金額が1000万円の人も、1億円の人も混ざっているようだから、ひとくくりにするのは無理がある。
金額がじゅうぶんだったら、『会社辞めてやる』を実行するのだろうか?
じゅうぶんな金額って、いくらだろう?
あるいは、ことお金に関しては、『じゅうぶん』っていうのは、ないのかもしれない。
それはきっと、お金にお金以上のことを求めるからだ。
保証とか、権力とか、幸せとか。
それらが保険の特約みたいにどんどん積み上がっていって、高額な保険料を支払いつづけるために、あくせくする。
ーーなんでこんなことを考えているかと言うと、以前読んだ本に出てきた、ホームレスの鈴木さんのことが忘れられないからだ。
隅田川の鈴木さん
鈴木さんはホームレスだけど、正確に言うと、家はある。
隅田川沿いのブルーシートハウス。そこに、彼女と一緒に住んでいる。
テレビとか、電化製品もある。電源は、廃棄されたバッテリーを工夫して利用している。その方法は、周囲の仲間にも教えてあげている。
毎朝、決まったコースを回ってアルミ缶を回収し、必要最低限の現金収入を得る。安定供給を確保するため、自ら店舗等に営業して『契約』を取り交わしている。
定期的に役所の担当者が来て、住まいの撤去を求められるけど、それも考慮して、家は可動性に優れた造りになっている。
すごいぞ、鈴木さん。
きっと、中小企業の総務とか、マンションの管理人とかやったら、能力を発揮する人材だと思う。もちろん、鈴木さん本人は、そんなのごめんだ、と言うだろうけど。
鈴木さんの暮らしぶりを見ていると、お金や幸せに関する価値基準が、ぐらぐらしてくる。鈴木さんの方が、私よりも人として『まっとう』に思える。
お金って、幸せって、何だろう?
考えても『正解』は出てこないけど、硬くなりつつある自分の頭をぐらぐらと揺さぶってみるのは、意味のあることだと思う。
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