どんぶり勘定と黒部の太陽
昨日にひきつづき、『失敗百選一覧』から。
何故、この失敗百選に興味を持ったのかと言うと、経済学で公共事業が必要だというリクツはわかったものの、我が国の公共工事って、本当に経済効果があるのだろうかと疑問に思い、あれこれ調べているうちに行きついたのだった。
果たして、失敗百選の中の『どんぶり勘定の公共工事 』と『川辺川ダム』を読んで、唖然としてしまった。
どんぶり勘定の公共工事
結論から言うと、日本においては、公共工事の代金支払い方法が、諸外国の国際標準の工事代金支払い方法と著しく異なっているため、利益を享受するのはもっぱら元請けの大手建設会社と金融機関であり、下請けはむしろ負担を押し付けられて、ちっとも景気対策になっていない、とのこと。
そして、発注側の『お役所体質』がすごい。予算を消化することが重要であり、場合によっては、架空の工事を『創成』してでも消化する。逆にお金が不足した場合は、受注者に我慢を要求し、後で何かと面倒を見る、等々。
やり方を変えよう、という試みもなされてはいるようだけど、本当に変わるまでには、あと100年くらいかかりそうな気がする。
川辺川ダム
熊本県南部に多目的ダムを建設しようという計画が打ち出されたのが、1966年7月。が、国と周辺住民らとの合意が形成されず、未だダム本体の着工には至っていない。
失敗の要因は、住民側は「ダム、いらない」と言っているのに対し、国側はその価値観の溝を埋めようとはせず、議論を避けて技術的な説明に終始し、膠着状態に。地元経済の活性どころか、この公共事業が、地域社会や人間関係を混乱させている、というのが失敗学的見地からの見立てであった。
ちなみに、平成12年度末時点で当時の全体事業費約2,650億円の内、約1,614億円(約61%)が執行済み(用地買収や付帯道路建設等の費用として)。
黒部の太陽
ダム建設に代表される、旧来型の大型公共事業って、ある時代においては、必要だったのだろうと思う。『黒部の太陽』を見ると、胸が熱くなる。でも残念ながら、すでにもう、黒部の太陽の時代じゃないと思う。
今、リニア中央新幹線の工事前倒しとか言ってるけど、リニアそのものの有用性もさることながら、経済効果ということで言えば、建設業界が人手不足のところにお金を注いでも、あまり効果は得られないんじゃないだろうか。失敗百選に選ばれてしまうような発注と支払の仕方であるとすれば、なおのこと。
それよりは、次の世代への投資や、あとは同じ人手不足でも、これから明らかに需要が増える介護等にお金を使った方がいいと思うのだけど。
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